あいちコミュニティ財団の不祥事がメディアを騒がせたのは昨年12月のこと。半年を経て、アキモトなりに本件をどう捉えたら良いか考えておりました。
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前体制の当事者や、新体制の方々。また、支援者や出資者の方々にも直接お話を聞く機会もあり、自分なりに整理してみたいと思います。単に、一組織の不祥事としてでなく、非営利組織の今後のあり方を考える上で、大事な教訓があると感じているからです。
あ、なぜこの時期にか。。。というと、一区切りがついたタイミングだからですかね。様々な人から色々なお話をうかがって、自分なりに多面的な見方ができてきたから。
秋元も、微力ながらこの財団の発起人に名を連ねていますし、設立時の理念にも共感しています。そしてもちろん、特定の個人を非難・糾弾する意図は全くありませんし、前向きな話を前提に書いたつもりです。

あ、本件、詳細ご存じない方もおいでかもしれませんね。
まずは、この事件の振り返りから。昨年12月に中日新聞・朝日新聞の社会面で大きく取り上げられたのがきっかけでした。地域面ではなく、社会面での扱いに、コトの重大さが読み取れるのでは。

三六協定結ばず残業、未払い 愛知の財団に是正勧告
ーー中日新聞 2017年12月30日(土)朝刊より

三六協定結ばず残業、未払い
愛知の財団に是正勧告

NPO法人の支援事業をする公益財団法人「あいちコミュニティ財団」(名古屋市東区)が、職員との間に時間外労働に関する労使協定(三六協定)を結ばずに職員に残業をさせた上、残業代を支給していなかったとして、名古屋北労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが、財団関係者への取材などで分かった。

 財団の評議員でつくる調査委員会の報告書や関係者によると、残業代の未払いは元職員2人に過去2年分で計約180万円。2人は、代表理事からメールで暴言を受けるなどしたとしてパワハラの被害も申告した。財団は愛知県など10以上の委託業務や基金事業を展開しているが、各部門ごとの経費計上の仕組みも不明確だった。報告書では「信頼を基本に成り立つ公益財団法人の根幹を揺るがす、ゆゆしき事態を招いた」と指摘した。代表理事は今月6日付で引責辞任した。

 前代表理事は本紙の取材に「労務関係の知識に欠けていた。職員への言い方や態度、伝わり方が押しつけや重圧に感じる部分があったかもしれない」と残業代未払いとパワハラを認めた。

 財団は2013年4月、発起人約650人の寄付総額950万円で設立され、翌14年4月に県から公益財団法人として認定。大村秀章愛知県知事、河村たかし名古屋市長が顧問を務める。社会問題に取り組むNPO法人支援や寄付を基に事業を担い、財団ホームページによると、今年11月末現在の寄付総額は約7140万円に上る。

(2017年12月30日 08時52分 中日新聞)


その後、財団公式ホームページで複数回の公式声明がでます。
木村くんが代表を同じく勤めていたmomoのページにも。

12月31日 【ご案内】昨日の中日新聞の報道について
http://aichi-community.jp/news/24589

2018年1月4日 【お詫び】代表理事辞任に関する経緯と顛末及び今後の対応について
http://aichi-community.jp/news/24598

2018年1月9日 【お知らせ】momoの現状に関する調査・確認について
http://www.momobank.net/news/2542/

2018年1月10日 【ご案内】新役員体制のお知らせ
http://aichi-community.jp/news/24980

その後、1月11日に朝日新聞・社会面でも更に大きく記事が掲載されました。

あいちコミュニティ財団 残業代未払い
ーー朝日新聞 2018年1月11日(木)朝刊より

あいちコミュニティ財団 残業代未払い
木村氏が代表理事辞職

 公益財団法人「あいちコミュニティ財団」(名古屋市東区)が職員と時間外労働についての労使協定を結ばず残業させ、手当も払っていなかったとして昨年、名古屋北労働基準監督署から是正韓国を受けていたことが分かった。財団の木村真樹代表理事(40)が責任を取って辞職した。

 財団は2013年、木村氏が中心になって設立。市民団体への資金調達支援などをしている。新しい社会貢献手法として、メディアにも頻繁に登場してきた。愛知県の大村秀章知事や名古屋市の河村たかし市長も顧問を務める。

 昨年退職した元職員2人からの残業手当不払いなどの申し立てを受け、労基署が昨年9月、是正を勧告。財団は過去2年分約180万円を払った。財団の内部調査で、深夜に職員にメールで業務指示をするなどのパワーハラスメントやルール化が徹底していない事業別会計処理などがあったことも判明。評議員会の勧告で12月、木村氏ら7人の全理事が辞職した。

 木村氏は「混乱を招いた責任をとる」との談話をネット上で発表した。辞職した7人中4人は、その後理事に復帰し、新たに3人が就任。10日の理事会で、新代表理事に榎田勝利・愛知淑徳大名誉教授を選んだ。

 県も経緯の報告を求めている。副代表理事の由里宗之・中京大教授は「木村氏の意欲に頼りすぎていた。本来、管理は別の人材を置くべきで、公益財団のレベルに達していなかった」と話している。(編集委員・伊藤智章)


そして2月2日に、報告会がおこなわれた…というものですね。

代表理事辞職めぐり説明会 コミュニティ財団 責任問う声も
ーー朝日新聞 2018年2月4日(日)朝刊より

代表理事辞職めぐり説明会
コミュニティ財団 責任問う声も

 残業代未払いやパワハラ疑いなどを指摘され、木村真樹代表理事(40)が辞職した公益財団法人「あいちコミュニティ財団」が2日夜、名古屋市内で説明会を開いた。約60人が参加、木村氏の業績を認めつつ、本人の釈明がないことや理事会の責任を問う声が出た。

 新代表理事の榎田勝利・愛知淑徳大名誉教授(72)ら幹部が冒頭に陳謝。榎田氏は「大きな間違いを犯したが、資金循環の仕組みがなくなっていいだろうか」と再生を誓った。3カ月に一度だった理事会開催を増やす、事務局体制を強化し、事業も見直し、1人のスターに頼らない集団指導で運営していく考えだ。

 神戸市からの参加者も含め会場発言が相次ぎ、▷12月6日の辞職後、31日まで公式発表が遅れ、肩書きがあいまいなまま、木村氏が対外活動を継続していた▷職員が1年以内に次々に辞職しており、理事会が気づかないのはおかしい▷人を応援する組織でパワハラを疑われる行為がしてきされたことは重たいーーなどの意見が出た。(伊藤智章)


で、つい先週末に、財団の年次総会があり、ひとつのくぎりとなった…というお話です。

で、この一件は何が問題だったのか。。。秋元の整理ですが
(1)前代表理事・木村体制の、創業者とスタッフのずれ・認識の甘さ。
(2)前代表理事・木村体制で、謝罪・対応が後手に回ったこと
(3)新代表理事・榎田体制での情報公開・説明責任の不徹底の問題

というのが、秋元の感じていること。
そして、これらの前提に、税優遇のある「公益財団」であるってことが、大きなポイント。
ざっくりいえば、法人税がかからない…という優遇を受けているわけですから、取り組みの公益性ともに、寄付によって成り立つということも合わせて考えれば、透明性は強く求められます。
(4)非営利セクターや、中間支援界隈の「だんまり」


それぞれについて、今回は(1)と(2)について、ザーッと書いてみたいと思います。
…つまり、後編もあるということですw

(1)前理事長・木村体制の、創業者とスタッフのずれ・認識の甘さ。
今回、新聞などで問題が露呈したのは、主に(1)パワハラと、(2)残業代の未払いという話。パワハラについては、受けたと感じる方々の主観の問題…ですが、関係者から一部メールなどで残っているものも拝見しました。言葉は、やり取りの文脈や関係性の中で定義されるものなので、言葉尻だけで判断すべきでない…とはいえ、そう言われても仕方のないものだったように思います。かなりキツイことを、書いてました。
また、残業代の未払いもそう。

ただ、小規模事業者の56.6%では労使協定(36協定)が結ばれていない、という調査が2013年に厚生労働省で行われ、公表されています。
また、事業を立ち上げていく起業家の猛烈な働き方やパッションと、後から加わるスタッフの間で温度感や期待値のズレがあるというのも、よくある話。
そんな中で、とはいえ当事者が労働基準監督署に訴えに行った、ということは、よっぽどだったんだ…というのが類推できるわけです。ま、不満があればいきなり労基なんかいかず、直接・間接訴えるわけですよね。結局、そこの初期消火でこじれたことが(そして、それは1度ではなく複数回だろうことは類推されますが)その後問題を大きくしたんじゃないかな、と思うわけです。

問題の大きさの認識を見誤ったということ、でしょうか。きっと、そこでちゃんと謝って、然るべき対応をすれば労基にもいかなかったでしょうし。そして、労基に行った後でも、謝罪と事後対応をできればメディアに情報が流れるということもなかったのではないか、と思います。

結局、スタッフの気持ちや状況をわかっていなかった、といえばそれまでなのでしょうが。

【学びのポイント1】
非営利セクターの立ち上げは、ま、そりゃ大変です(僕も2001年に創業し、17年やってきましたからわかるつもりです)
就業規則や賃金規定がないとか、36協定ってなに?って感じだったり、超勤手当なんてあるはずない…なんてことも中にはあるでしょう。事業を立ち上げていく起業家や創業メンバーの猛烈な働き方やパッションと、後から加わるスタッフの間で温度感や期待値のズレがあるということを、認識することの重要性は、ここであらためて確認したいと思います。
そして、事業や社会的な存在感が大きくなっていく中で、ルールを守る意識、コンプライアンスへの感度(センシティビティ)をちゃんと持ち、対応していくことが求められるでしょう。今回で言えば税優遇される「公益財団」であるということは、すでに「社会の公器」である自覚とガバナンスが求められたのではないでしょうか。まして「休眠預金」狙いに行く、というのであれば…。

(2)前理事長・木村体制で、謝罪・対応が後手に回ったこと
前述の通り良いことではないけれど、中小企業で36協定が締結されていないことは、珍しくない状態だったとは思います。ただ、スタッフからの直接・間接の訴えへの対応、労基の立ち入り以後の対応などで収束させることができたのではないかと思います。ココまでは、当事者への謝罪や対応で、収束できたのではないかと思うのです。

さらにメディア報道後の対応も、後手後手に回ったようです。結局、報道後にサイトに声明がアップされたのは翌日ですが、ここでは「ご案内」としてメッセージが発信され、結局謝罪として公式声明が発表されたのは約1週間後の1月4日。木村前代表は、毎週のようにお知らせメールを支援者に向けてDM配信をしていた事を思えば、発信の手段もあったはず(結局本人からの直接の報告・謝罪メールなどはこれまで配信されていません)
この報道のタイミングで、謝罪や情報公開の対象が当事者だけでなく、寄付者や連携先・取引先にも広がり、この不祥事のフェイズが変わったように思います。

木村代表(当時)が、評議会での勧告を受けて辞職をしたのが12月6日だったようですが、新聞報道があった12月30日までの3週間、対外的には一切発表せず、代表理事のまま業務をしていたことも大きな波紋を生みました。連携して取り組みをし、12月中に打ち合わせをしていた大手企業さんからすると、新聞報道は寝耳に水な話になったようです。そりゃ、新聞で不祥事を目にしたわけですし「え、もう1ヶ月前に代表やめてたの?この前打ち合わせしたときも、何も言ってなかったのに」となるわけで。
もし、あの報道の直後に記者発表を行い、ステイクフォルダ向けにメール・電話・対面で謝罪と説明を行っていれば、とも思います。
そして、あいちコミュニティ財団は、公益財団法人であるってこと。法人非課税などの税優遇をされている特別な存在。そして、高潔な理念を掲げ「キレイゴト」を語り広く寄付やボランティアを呼びかけてきたからこそ、ステークフォルダであり、社会に対しての説明責任と謝罪も求められるのではないか、と思います。

【学びのポイント2】
先日危機管理コミュニケーションの専門家からこんなことを教えていただきました。
「不祥事が起きたときに、経営者は被害者意識でなく当事者意識にギアチェンジできるかどうかが極めて重要なんだ」と。「なんで俺だけ?あいつも悪いのに?…という感じで、被害者意識だと、社員やメディア、社会がおうおうにして、敵に見えちゃう状態に陥ってしまう」と。
悪いことや問題があれば、謝る。そして、すぐにそれからできる対応を誠意をもってすることなんですよね。
まったく別件ですが、日本大学アメフト部のあの学生は「お詫びをするなら顔を見せてお詫びしないとお詫びしたことにならない」という潔い姿勢と、しっかりと「何について悪いと思って謝るのか」について明確に述べたわけで、それが共感をよびました。謝罪を、本当の謝罪たらしめた。
当事者として、誠意を持って報告と謝罪をできるか。

財団の公式声明も、言葉はあやまっていても、「この人はなにを悪いとおもっていて、誤っているのかわからない」と思わせてしまっているようで、それだとお詫びも意味がないわけです。惜しいなあと思います。
…一言で言えば、結局さっさと出てきて、ちゃんと謝ればよかったのになぁ。。。と思います。
それがなく、再発防止策や改善策を示されても、論理としては理解できても共感や腑に落ち感がない…ということなのでしょう。

と、ま、ここまでは、終わってしまった話だし、過ぎた話をいまさらどうこうしたいわけでないです。

とはいえ、木村前代表をはじめこれまでのメンバーが、高潔な理念のもと誰もやれなかったあいちコミュニティ財団を立ち上げてここまで運営してきたことは(色々とずさんな点があったとしても)事実だし、やはり手を上げて行動し、多くの人を巻き込んで作り上げてきたことは引き続き、敬意を表していきたいと思っています。

そして、稀な才覚をもち努力を重ねてきたわけです。人生なんて、長いんだし、今回の件でなにも全て終わったわけじゃない。だからこそ、区切りをちゃんとつけて、さらに活躍してもらいたい、と思います。

(次回へと続く)

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秋元祥治
NPO法人G-net理事(創業者)・OKa-Bizセンター長

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