先日、地域活性化に取り組む全国各地の有識者と京都府与謝野町とその周辺に視察にお伺いする機会に恵まれました。山添藤真・与謝野町長にアテンドいただきながら、地域の様々な活性化の事例を拝見させていただきました。
現在、40歳の山添町長は、地元出身でフランス国立社会科学高等研究院パリ校への留学を経て、町議に。そして、2014年に32歳で町長に就任し、全国最年少町長として注目を集めてきた人物です。

移住定住の促進や、様々な改革を実施。豆腐工場の町内への工場進出に伴い、そこで大量に生まれるおからに着目。おからや水産加工の現場から出る魚のアラなどとともに加工し、独自の有機肥料を町が運営する加工所で生産。それらを用いて循環型の農業を実現し「京の豆っこ米」といった付加価値のある農産物の生産につなげています。こうした現場を体感し、そしてストーリーを聞いた上での炊きたてご飯は、いよいよ美味しく感じられます。

これまでの日本では「より良いものを、より安く」が美徳とされてきたフシがあるように思います。しかし、本来は「より良いものを、より適切な価格で」と捉えるべきではないでしょうか。
地方の資源や体験が、これまで本来よりもあまりにも安く販売されているように思え、私にはもったいなく感じられてきました。

地域ならではのその土地の「当たり前」や「こだわり」が、地域の外の人々から見たときに、大変な贅沢に感じられると言うこと。豪華で華美な贅沢ではなく、その場所でないと味わえない有り難さ。ご一緒した大瀬良亮さん(株式会社KabuK Style 創業者)が「ローカルラグジュアリー」と称していたことが印象的でした。

これぞ「ローカルラグジュアリー」だと鮮烈な印象を受けたのが、里山の集落にあり古民家を改装して今月オープンしたばかりのサウナ「蒸 ー五箇サウナー」です。周囲はいわば田舎の集落で、農作業をするおばあちゃんとすれ違うような場所。周囲に飲食店や店舗などもなく、車で向かう道中に失礼ながら「この道で大丈夫なのか?」と思うほど。
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実際にお伺いすると、あまりの心地よさに驚きました。有名なサウナ店での修行を経て足立樹律さんが中心になり開設し、6人でゆったり入れるサウナ室。セルフロウリュウをしながらしっかり汗をかき、その後は小川を水風呂代わりにして、外気浴に。なんと水風呂は、古民家の前を流れる小川なのです。
小川のせせらぎや山の鳥のさえずりをBGMに極上の「ととのい」に出会うことができました。時間がとまったかのように日常を忘れて、ただただリラックスできる極上の時間が流れていきます。
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近隣のおじいちゃんおばあちゃんとの近所付き合いも良好で、毎週月曜日は地元の方を対象に、ワンコインでサウナを楽しむことのできる「銭蒸Day」をもうけ、地元の人が集まる場所を目指しているとのこと。店頭の木製看板は、そうした交流の中からご近所さんに頂いたというエピソードからも、早々に地域に根づいていることが伺われます。


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おひるごはんで頂いたのは、白味噌仕立てのおうどん。丹後ちりめんの産地である与謝野町では、織物の工場で働く人々がその仕事の合間にかきこめるように、とお昼ごはんの定番はおうどんとのこと。そして、京都地域のお雑煮といえば白味噌仕立てが定番ということで、ごちそうになりました。
こうした土地の歴史や記憶をお伺いしながらいただくおうどんは、華やかではないかもしれませんが、贅沢なランチに感じられたのでした。

そして、与謝野町は2015年よりビールの原料となるホップの生産にのりだします。順調に生産が拡大し、現在収量も10倍以上に。現在では、与謝野町出身の濱田祐太さんが中心になり、株式会社ローカルフラッグを設立。地元与謝野町のホップをふんだんに使用したクラフトビール「ASOBI」の生産・販売をすすめています。
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来年には、京丹後鉄道・与謝野駅前の空き地を利用して、作りたてのビールを楽しむことができる工場併設のビアバーを建設予定とのこと。店長に就任する野村恭平さんから現地を案内いただき、これからの構想をお伺いしました。また、目の前にある与謝野駅では地元の方々が近年桜の植樹をすすめていて、いずれ春にはクラフトビールを片手に桜見物できる未来を楽しみにしているとのこと。
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広い空と、美しい里山の景観を楽しみながら地元産の原料で丁寧に作られるビールを楽しむことができる、というのもまさにローカルラグジュアリーといえるのではないでしょうか。

仕事柄全国各地を訪問しますが「うちのまちにはなにもない」「特別なものがないから」とどこへ伺っても口々にするのを耳にします。ディズニーランドや渋谷の賑わいは、もちろん地域にはありません。
しかし、日本の地方や田舎には、必ず魅力や価値がある。
地域ならではのその土地の「当たり前」や「こだわり」が、地域の外の人々から見たときに大変な贅沢に感じられると言うことなんです。

雪国の人々にとってはなんの変哲もない雪の風景や地吹雪も、都市部の人々や南国の人々にとっては憧れになり、旅の目的に十分なりえます。
港町では雑魚と呼ばれ始終に流通せず地元のご家庭で食べられてきた魚料理や食文化は、やはり都市部では食べることのできない稀有な料理として、キラリとした魅力に、外からは見えるように、です。

ポイントは、豪華で華美な贅沢ではなく、その土地の歴史や文化、自然や風習を感じられるという価値。その場所でなきゃいけない、という唯一無二なものを「ローカルラグジュアリー」と呼ぶとすれば、まさにそこに日本の地域の可能性があるのです。