金華山を背に、長良川のせせらぎが聞こえる岐阜市のほとり。先月大学生中心による地方創生をテーマにしたビジネスプランコンテストが行われました、全国から30名以上の大学生が集まったこの取り組みは、行政主導でもなく、補助金や助成金をもらったわけでもない。21歳の大学生がこの取り組みを始めたのは「おもしろそうだったから」だ。
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筆者の住む岐阜市やその周辺では、大学生など若者たちが中心となったまちづくりの取り組みが続々と生まれている。とは言え、学生たちが行うまちづくりは、すぐに、経済的な効果や、事業的なインパクトを生み出しそうにはない。「学生の遊びみたいなもの:そう冷ややかに見る向きもあるだろう。しかし長期的に捉えたときに、こうした若者のチャレンジを地域全体が後押しするかどうかは大きな違いが生まれるのではないでしょうか。

21歳の主催者・岩田琉我が呼び込む「外からの風」と「内の熱」

今回の「ビジネスコンテスト in 岐阜市」は21歳の大学生、岩田琉我さんらが主催。この取り組みは彼の「岐阜市の課題を学生の力で解決しよう」という呼びかけから始まりました。2泊3日の行程で全国から30名もの若者が参加費を払い、集結。フィールドワークを通じて岐阜の街の魅力に出会い、そして寝る間を惜しみ、既存の価値観に縛られない「街のアップデート」の議論を重ねたのでした。
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例えば、プレゼンテーションで飛び出した「うまっち」という企画。これは、伝統文化である「鵜飼」の鵜匠と鵜のコスプレをして、岐阜公園で街コンを行うというものだ。大人から見れば一見「遊び」や「突飛な発想」に見えるかもしれないが、これもイノベーションの萌芽かもしれない。ただ、なによりもこうして街のことを真剣に学び考え議論したことにこそいみがあるはずだ。
主催した岩田さんはこの挑戦を通じ、多くの地域の支援してくれる大人に出会ったという。そしてか「自分も、かっこいい大人になんなきゃな」という決意を新たにしたという。

地元の鉄道を残した、と動き出した11歳の小学5年生

この春、東京大学を休学し、地元・岐阜の地域づくりにより時間を投入したいと言う若者がいる。池田町出身、高橋秀歩さんだ。高橋さんの歩みは、小学3年生の時に抱いた「養老鉄道が将来なくなるかもしれない」という小さな危機感から始まった。日常で慣れ親しんだローカル鉄道が、廃線の危機にあると小学校の授業の中で知り、夏休みの自由研究で鉄道の守り方を調べたという。そして、小学5年生からは町内にある3つの駅を毎月第3日曜日に掃除するという「目の前の小さな行動」を積み重ねてきた、実践者だ。
11歳の少年が始めた掃除が、21歳になった今、多くの仲間を巻き込む「養老鉄道応援団」という大きなコミュニティへと育ち、マルシェの開催など新たな賑わいを生んでいる。高橋さんの「気がついたときに、気がついた人が、気がついたことを始める」という姿勢は、私たち大人に「社会の当事者」であることの原点を突きつける。
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しかし、こうした取り組みは美談だとしても、すぐには「効果もインパクトも生みそうにない」のもまた事実だろう。では、なぜこうした若者の挑戦を応援することが重要なのだろうか。

「励ましキャピタル」が地域活力を生み出す源泉だと思う

こうした若者たちの活動が地域にもたらす真の価値は、目に見えるビジネスの売上だけではない。ハーバード大学のロバート・パットナムらの研究によれば、信頼とネットワークという「ソーシャルキャピタル」が豊かな地域ほど、明確な統計的メリットを享受できることが示されている。つまり、つながりが豊かな地域であればあるほど、チャレンジもしやすいし、応援を受けたりコラボレーションも生まれやすい、ということだ。
また、スタンフォード大学の社会学者マーク・グラノヴェッターによれば、新しい事業や経済成長の源泉は、実は身近で強い絆からではなく、疎遠な知人や異なるコミュニティとの「ゆるいつながり」からもたらされるという。
まちづくりに岩田さんや高橋さんのような若者が入ることで、既存の「町内会」や「消防団」といった強いつながりの中に、外の世界の価値観など新たな弱いつながりが持ち込まれる。若者の挑戦を応援することは、地域にイノベーションを生み出す「風穴」を開け、停滞した空気を循環させることとなるのではないでしょうか。
共感からつながり、そして応援し合う中でつながりが生まれていく。まさに地域の中に励ましが資本として積み重なっていくことが地域活力を生み出していく源泉になるのではないか。その時に若者を応援すると言う事は、そのど真ん中の旗印になるのではないかと思うのです。

「ジェネラティビティ」が大人を活性化させる

若者支援の意義は、支援を受ける側だけに留まず、実は大人にも価値があるはずだ。ハーバード大などで教鞭をとった心理学者エリクソンが提唱した「ジェネラティビティ(次世代継承性)」という概念があります。「次世代を育てている」という実感を持つ大人は、幸福度が高く、死亡率が低いという研究結果も存在します。次の世代の若者を応援し励ますと言う事は、実は大人たち自身の幸福度に直結していると言うことなんです。そして個人の幸福だけでなく、地域の豊かさや魅力を再生産し、拡大していくと言うことにもつながっていくのではないでしょうか。

「土を耕す」という大人の役割。成果を急がない勇気

私たちは、どうしても目に見える「成果」や「効率」を求めてしまいがちだ。しかし、地域に新しい花を咲かせるためには順序がある。種を植え、水をやる前に、まずはカチカチに固まった土を耕さなければならない。
若者たちの小さなチャレンジ自体は、今すぐに劇的な経済効果を生むわけでも、社会問題を一掃するわけでもないかもしれない。しかし、それでいいのではないでしょうか。彼らがバットを振ること、それ自体に最大の値打ちがある。
大人が果たすべき役割は、彼らのアイデアを評価・選別することではない。彼らが失敗しても笑われず、次の打席に立てるような「土壌」を耕し続けることではないでしょうか。

3月29日、学生の「本気」が形になる日。Kinka to(きんかっと)

こうした「耕されてきた土壌」から今、また新たな芽が生まれます。今週末の3月29日(日)、岐阜大学の笠井万櫻さんら、学生たちが主体となって企画した地域活性化イベント「Kinka to(きんかっと)」が開催されます。岐阜城がそびえる街のシンボル、金華山の標高329mにちなみ、3月29日を「金華山の日」として定着させたいという学生たちの発想から始まったのです。
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岐阜市まちなか案内人と共に登る金華山登山や、信長ゆかりの地を巡る公園内ガイド 、歴史を継承する加納高校地域研究部による研究発表や 、鵜飼観覧船の船頭による伝統文化の講話。地元企業・坂口捺染などの協力を得てキッチンカーの出店なども予定されています。

チャレンジに優しい街、岐阜へ

彼らの「小さなチャレンジ」自体は、今日明日に世界を変える魔法ではきっとない。しかし、後押しし、見守る大人が増えることで、土壌はより豊かに耕されていくのではないか。
種を植え、水をやり、土を耕す。この一見効率の悪いプロセスの先にしか、結局は本当の意味でのイノベーションや、持続可能な地域はないのではないです。

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